メッセージの伝え方で「お客様の心理」も変わる   IKEA
ネガティブなイメージもポジティブに変えてしまう!伝え方の大切さをIKEAから学ぶ。

スウェーデン発祥の家具メーカーIKEAも一度は日本から撤退、何故今人気なのか? 時代の流れでお客様の購買志向性も変わり、メッセージの伝え方次第で高い支持率に変わる事が分かります。

IMG_0693.jpgIKEAは今ではとても有名なブランドになり、日本中でも多くのファンがつき、高い支持を受けどの店舗も多くの人で賑わっています。特に、年末近くになるとクリスマス用の飾り付けや、春になると新生活用の家具をそろえるなどで、普段に増して大混雑になるほど人気の高いお店になっています。
このIKEAも、日本では決して順風ばかりではありませんでした。 日本では1970年代に千葉と神戸に出店をしますが、当時ではIKEAの商売のやり方は受け入れられず、残念ながら1986年に日本市場から撤退を余儀なくされました。 世界で受け容れられた商売のやり方が、日本では受け入れられないという事は、これまでも良くあります。 ところが、15年ほど経った2001年に再度日本市場進出をIKEAが図ります、今では国内に6店舗あり、特に横浜港北店は「世界で一番売上の高い」店舗になっています。 撤退を余儀なくされたIKEAが何故、世界で一番売上が高い店舗を、日本で作れるのかは興味深い所だと思います。

創始者は5歳の時に「マッチ売り」から始まり、徐々にアイテムを増やし家具作りの世界へ、立身出世の創始者イングヴァル・カンプラード氏

創始者のイングヴァル・カンプラード氏は、5歳の時からマッチ売りを初めて、徐々に彼の商才が磨かれ販売の分野が広がり、1940年代に家具を作り販売を始める事になったそうです。その後、価格競争力をつけるために現在の形の「フラットパック」を開発し、家具の分野にもノックダウン式の組み立て式を導入し、価格競争力をつける事をビジネスの基本の一つにしました。 その後1958年に、IKEA一号店をスウェーデンにオープンし、1960年代には多店舗展開を図ってゆきました。今では全世界44ヶ国、売上高約3兆円を生み出す超巨大家具メーカーに成長しています。
*日本では、IKEAは「イケア」と発音しますが、海外では「アイケア」と発音しています。「I」の文字を「イ」と発音する所は少ないので、日本が異例なのですが、社名もイケア・ジャパン株式会社になっています。 ちなみにIKEAという4文字は創業者の名前Ingvar Kamprad氏と彼の出身地の Elmtaryd, Agunnarydから来ているそうです。 出身地を会社の名前に付けるのが素晴らしいと思います。

家具は家具屋さんが運んできてくれて、すぐに使えるのが常識だった。日本で「イケアの最強の強み」が弱みになった時代

IKEA最大のコスト競争力の源(フラットパック、持ち帰り)も、受け入れられない時代もあった。

IMG_0688.jpgフラットパックというのは、当時の考えでは画期的なアイデアで、家具をバラバラにした状態(ノックダウン式)で梱包し、梱包体積を小さくし物流費を軽減してコストダウンを図ります。 また、組み立て費用もかからず、全体で経費節減が図れますので、メーカーの価格競争力としては非常に強くなります。 しかし、反面お客様にとっては、①自分で作らないといけない という面倒な要素があり、ここがIKEAを支持する層か拒否する層に分かれてくる所です。 しかもIKEAは②家まで配送するのはお客様自身の責任になっており、基本は持ち帰り でメーカーの物流費も軽減されています。
私が初めてIKEAを利用したのは1992年、ロンドン郊外のIKEAでしたが 最初に驚いたのは駐車場での光景でした。 ベッド用の大きなマットを小さなミニクーパーの天井に紐で縛りつけている光景には、大変驚きました。ただでさえ、小型のミニクーパーは、窓も殆ど遮られて前が見えないような状況になっていました。 「ここでは、自分で持ってかるのか?」という新鮮な驚きがあり、自分がこれまで考えていた「家具は家具屋さんが運んでくれるもの」という常識を見事に覆してくれました。 そんなIKEAに入り、本棚を購入し自宅に持ち帰り、取扱説明書を見ながら本棚を何とか作ったのですが、小さなネジ回ししか無かったので、出来上がった頃には軽い腱鞘炎になっていました。 その後、早速電動工具を購入これがDIYの始まりに繋がったかも知れません。 外国の人は、自分の家の修理もかなりのところまでは自分で修理するので、電動工具は当たり前の時代だったと思いますが、日本の習慣に慣れてしまっていた私にとっては「良い機会」だったように今では感じます。
そんな常識が根強い日本市場にIKEAが進出した1970年代は、まさに「家具は家具屋さんが無料で設置してくれる」時代、しかも設置してすぐに使える事が常識になっていた時代です。 しかも、高度成長期で「忙しい」時代で、とても自分で作らないといけない商品は受け入れるような時代では無かったと思います。 また、車も普及していますが、家具を載せるような大きな車はまだありませんでした。 そんなことで、IKEAの日本進出は成功せず1986年に撤退しました。(その他にも理由はあったと思いますが)

時代が変わると「購買志向」も変わる、自分で作る環境も出来る、デザインの良いものが欲しくなる。

自分で作るのも「苦」にはならず「楽しみ」になる、CPとデザインを求めてお客様のスタイルが変わる。

IMG_0664.jpgIMG_0666.jpg2001年にIKEAが再び日本進出を図ります、日本の経済もバブルがはじけ、高度成長にも陰りが見え始め、規制緩和が色々な分野で始まって、小売市場は大型化が進み始めました。また、インターネットで情報が行き交う時代になり、IKEAにとっては最初の進出の時代とすっかり様相は変わりました。また、お客様の方も、若返り、自分で作ることにも、時間のゆとりもあり苦にならないようになり、むしろ楽しむ様な時代になってきました。また、CPも良くIKEAの本来考えていたコスト競争力も発揮できるようになってきました。 時代の流れにより、お客様の臨むべき満足が変わってきているのです。 高度成長期で給与水準も上り調子で忙しい時代では受け入れられなかった事も、この時代では受け入れられるようになりIKEAは一つの最新トレンドのようにメディアでも多く取り上げられるようになり、その事がさらにお客様を呼ぶことになりました。最大級の港北店では、東京からも無料送迎バスが出ており、多くの人がこの港北店に集客されています。


ネガティブのメッセージをポジティブに変える、伝え方の大切さを感じます。

日本人の考える「つつましさ」を考え直してみる必要があります。

IMG_0660.jpgIKEAには多くの看板があります。それらをいくつかここで掲載しますが、ここで大いに参考になるのは、
①正しく情報をお客様に伝える事、
②分かりやすく伝える事、
③そしてポジティブに理解してもらえるように伝える事 
です。日本の家具屋さんであれば、仮に持ち帰り専用であった場合には「申し訳ありません、配送できません」というような消極的な表現になると思います。 これは、店主の方も本当に「申し訳ない」と思っている事から、日本人らしい表現で「陳謝」型の表現になってきます。 ところが、IKEAの場合には 「IKEAは大量生産し良いものを安く作りますので 安い価格で販売します」 これがIKEAの仕事です。 一方「お客様の仕事は、自分で作る事です」 と書いてあり「お手頃価格を一緒に実現してゆきましょう」 と説明しています。 「一緒に実現しましょう」と運命共同体のように呼び掛けるポジティブな表現で、非常に共感を感じます。また「IKEAの仕事」と「お客様の仕事」を分けて書いて、理解を得やすい様な表現になっています。 つまりネガティブな事をポジティブにする上手い表現がここにあります。 多くのお客様はこれで理解されていますし、これで十分満足されています、だからこんなにもIKEAの人気が続き、繁盛しているお店になるのです。しかし、多くの日本の小売店は 長い歴史を持ちこれまでの常識の上に成り立って居る事と、日本の商習慣になれてしまっている事、また国民気質も遠慮がちですので このIKEAのような表現は苦手です。 しかし、これは非常に良い参考例です、しかもお客様の満足度はどんどん変わっています。時代とともに変えないといけない考え方もありますので、今のスタイルで良いかどうかを一度考え直してみてはいかがでしょうか?

サービスもいっぱい、IKEAのファン作り  一歩先を進んだサービスの提供

IMG_0691.jpgIKEAには 他にはサービスがいっぱいあり、これがお客様の満足度を高めています。入口すぐのところにキッズサービスがあり、小さなお子様を預かり遊ばせる遊園地があります。子供もここを楽しみにしていますので、IKEAに小さい時からなじむ事になり、小さな時期からIKEAファンになってもらう事にもなります。親御さんもゆったりと家具を見て回れれるので、落着いて決める事が出来ます。また、レストランも当初は空いていましたが、今ではランチタイム、夕方も大変混んでいますし、ここで若いママさん同志の情報交換会などが行われています。単なる家具売り場と言う事でなく、非常にコアな存在になっていることが混み方でも分かります。IKEAではお客様を満足させるこういうサービスに力を入れていていますが、これでお客様が大満足されているので これが現代のお客様本位のサービスになっているのだと思います。多くの日本の小売業の場合は このバランスが逆の所が多いと思います。良いデザインの家具を安価で作り提供し、家具は自分で作ってもらう しかし家具をゆったりと選んでもらい、良い時間を過ごしてもらう これがサービスだという考え方です。 日本の場合長い間、「送料は無料、組み立ての無料、設置も無料」など何から何まで無料がサービスの最高峰のようなやり方をやってきましたが、見直すべき時期なのではないでしょうか? 
しかし、その時にもIKEAのように「ネガティブな事をポジティブに受け取ってもらう伝え方」は多いに参考にしてほしいと思います。